![]() | 虚言少年 (2011/07/26) 京極 夏彦 商品詳細を見る |

人気者でもなければイジメっ子でもなく嫌われ者でもなければイジメられっ子でもない。毎日がそこそこ楽しくて、そこそこ幸福であり、なのにそれを自覚していないことが多いので不平不満を垂れたりして、面白ければ笑うし悲しければ泣くし好きなことはやりたいし嫌いなことはやりたくなくて、学校も好きでも嫌いでもないという、まあべたっとしたどうでもいい子供なのである。
ただ、まあ特徴を一つ挙げるなら。
僕は―嘘吐きなのだ。
クラスのザコキャラに徹している少年、内本健吾には密やかな趣味がある。
「笑い」である。
面白いものがみれるなら、ちっちゃい嘘くらいいくらでも吐いちゃうのである。
クラスメートのノートにトラップを仕掛けたり、友達を陥れたり。
しかもそれを密やかに遂行するのが、ケンゴのやり方である。
そんな彼の趣味を共有する仲間が二人。
彼らの周囲で起こる事件ともいえない出来事を長々と書いたのが本作。
笑いのツボについて言及している作品のようだが、共感できないとちっとも面白くない。
「3メートルの崖から落ちた」を「3万メートルの崖から落ちた」と言い間違いしたところで、腹を抱えて笑えるだろうか。
些細な出来事がとてつもない笑いを生み出すことは、時としてあるものだが、そういった笑いはその場にいた者にしか伝わらない。
そして伝える筆力がこの場合、ない。
いや、面白い人には面白いんだろうけど、私にはくどすぎて笑えない。
笑いを「うけけけけけけけ」と表現するセンスがわからない。
狙って書くと面白くないのが京極作品、という思いを確信に変えてくれた一作。
2012.05.03 ▲
![]() | ポリティコン 上 (2011/02/15) 桐野 夏生 商品詳細を見る |
![]() | ポリティコン 下 (2011/02/15) 桐野 夏生 商品詳細を見る |



大正時代、山形の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。1997年3月、村の創始者の孫である東一は、入村を希望する少女マヤと出会った。父親は失踪、母親は中国で行方不明、天涯孤独となったマヤは、母親の恋人だったホームレスのクニタと、婚家を逃げだしてきた外国人妻スオン、アキラ親子とともに、偽りの家族としてこの村に逃れてきたのだ。
八十年の歳月を生き延びたユートピア・唯腕村だが、現在では高齢化と過疎化に悩み、年金と養鶏場の運営でわずかな現金収入を得る貧しい村だ。本来なら入村者を受け入れる余力などないはずだが、労働はせずに芝居一筋の理事長の素一は、若く美しいスオンとマヤを目当てに、入村を許可してしまう。それをきっかけに働き手だった老女たちが反乱を起こし、村の均衡は崩れ始める。
そして素一の死をきっかけに、それまで老人たちの言いなりになっていた東一は、新理事長の地位を強引に手に入れた。寝たきりの老人を村外の施設に追い出し、集会室を私物化、スオンが連れてきた外国人妻たちと関係を持ちながら、村の理念に反する商売をはじめようとする。
さらに美しいマヤの気を引くため、学費を出してやるとあてのない約束をし、肉体関係を迫る。しかし、心までは手に入れ得ないことに業を煮やし、自分の迂闊さからかかわりを持ってしまったヤクザに、借金のかたにマヤを差し出してしまうのだった。
小さな国の王様になったユートピア育ちの男が、自分の欲望をコントロールできずに自らの首を絞めてしまう。
女好きの父を軽蔑しながら、自分も同じ道を歩み、村内の権力をめぐって醜い争いを起こす。
マヤに対しては、純粋な想いを抱きつつも、肉欲に任せて乱暴を働いた末、後戻りのできない過ちを犯す。
一貫性のない行動に、読んでいる方は疲れてしまうのだが、このおかしな性格設定を異常な環境下で育ったせいだとされると、文句のつけようがない。
幼少期を異常な環境で過ごしたのはマヤも同様で、始終家に薄汚れた外国人が出入りして、それを当たり前だと思っていた時期があった。
高二の春に旅行先で母が失踪、安否不明のまま、数年ぶりに再会したクニタに連れられ、唯腕村で文明とかけ離れた生活を送ることになった不安と孤独は計り知れないはずだ。
しかし母の仕事のきな臭さを感じ取っていたマヤは、本当のことを東一に話すことができない。
そこまでは共感できるのだが、初対面の十も年上の男を呼び捨てにしたり、貞操観念がないあたり、やはりどこか歪んでいる。
しかも彼女は学費と引き換えに肉体を要求し、終いには自分を売り払った東一に対して、怒りや蔑みという激しい感情をほとんど見せない。
それどころか、彼女はただ幼さゆえに、男の激しい愛が受け入れがたいだけなのだという表現が見受けられる。
あるいは東一の熱い愛を冷たくはね除けた女なのだから、損なわれても仕方がない、と自省するのだ。
それは私から見たら異常なことで、しかしここに描かれた誰もが欲望の塊りで、個体差がないこの異様さの中では、まるで無欲で聖女のようでもある。
食品偽装や過疎や高齢化、外国人妻や脱北者などの問題すら霞んでしまうほどの欲望の渦。
毒だらけでかえって毒々しさが失われてしまった、というのが全体の感想か。
2012.04.15 ▲
![]() | 卒業 (講談社文庫) (1989/05/08) 東野 圭吾 商品詳細を見る |

大学4年の秋。卒業を前にそれぞれの思いを抱えた7人。
大会を前に剣道に打ち込む加賀、父親に反対されながらも東京に就職を決めた沙都子、剣道の県予選で敗退した波香、恋人同士の藤堂と祥子、同じく恋人でテニスのペアでもある若生と華江。
その中の一人、祥子がアパートの自室で死んだ。部屋は密室状態。自殺なのか、他殺なのか。
親友の死に納得がいかない加賀たちは、自分たちで事実を追求しようとするのだが・・
「若者たちの肖像を年上の作家が描こうとすると、若造りした老人といった感じになりかねないが、東野自身が若い世代に属するだけにリアルで不自然なところがない」と解説の権田氏が書いているのには、呆れた。
いかにも年輩者が想像で描いたような人物描写だったからだ。
トリックは図式つきで解説されるが、それはつまり文章だけでは伝えるのが困難であるということだ。
興味もないゲームのルール説明に、考える気も失せて読み飛ばしてしまった。
そして結果として、熱心に読む必要はないことが判明する。
完璧なトリックではないからだ。
不完全なのは動機も同様。
あの程度のことで、自分の良心を殺すだろうか。
密室と言い張っているが、全然密室ではない。(内側からの誘導があれば窓からの出入りが可能)
致命的なのは、犯人が自分は現場となった部屋に指紋を残してないはずだと独白していることである。
何度も部屋に出入りしていた者の指紋が残っていないはずがないのにも関わらず。
警察の鑑識捜査でも、第三者の指紋が出てきているはずなのに、言及されない。
このようなものを出版して、作者も編集も恥ずかしくないのだろうか。
これこそ加賀にも解けない謎だろう。
というわけで、人気作家東野圭吾のこの初期作品には、
「このミステリーがひどい!」
の称号を与えたいと思います。
2012.03.22 ▲
![]() | 神様ゲーム (ミステリーランド) (2005/07/07) 麻耶 雄嵩 商品詳細を見る |



10歳の誕生日を迎えた芳雄。ケーキのロウソクの火を吹き消すと、なぜか一本だけ消え残る。去年も一昨年も一本だけ残ったのを覚えている。お父さんもお母さんも勘違いして、僕の誕生日を一日早く覚えてるのかも。そんな疑いさえ生じるほど、ブルーな気分になる誕生日だった。
気が塞ぐのはそのせいだけではない。芳雄の住む神降市で、連続して猫が殺される事件が発生しているのだ。お父さんは刑事なので、猫殺しがエスカレートして、次は子供が狙われないかと心配している。芳雄が片想いしているミチルがかわいがっていた野良猫も犠牲になった。首と両脚を切断されて、無残に捨てられていたのだ。そんなミチルのためにも、同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。
そんな時、掃除当番が一緒になったのをきっかけに、クラスメイトの鈴木太郎と話をするようになる。転校してきたばかりの鈴木君はだれとも打ち解けず、地味な存在。そんな鈴木君が芳雄の「鈴木君はどこから転校してきたんだい。」という質問に突拍子もない答えを返してきた。
「ぼくは天上から来たんだよ。」と。
鈴木君は自分を神様だと言い、担任の若い美人の先生が不倫をしていること、芳雄が三十六歳で死ぬこと、両親の本当の子じゃないことを教えてくれる。さらに猫殺しの犯人が秋屋甲斐という大学生だということまでも。
鈴木君が嘘つきなのか、それともこれは何かのゲームなのか、判然としないままに探偵団の作戦会議で、芳雄は猫殺しの犯人として、秋屋甲斐の名前を出してしまう。そしてその人物が実在することを知ることになる。
いかにも怪しげな秋屋甲斐が犯人だと確信して、探偵団は嘘の証言を企み、警察の目をそちらに向けようとする。
数日後、探偵団の本部として使っていた秘密の家で、同級生の英樹の死体を発見する。現場は裏庭の井戸の中。しかも密室状態だった。秋屋甲斐の復讐の可能性に怯える探偵団の仲間だが、親友を失った芳雄は英樹の仇をとりたいと考える。そこで鈴木君に犯人に天誅を与えてもらうように頼むのだが、それは予想外の事件に発展する・・
ミステリーランドの一作。
子供向けに振り仮名がうっているが、内容はそこそこえげつない。
作中に出てくる戦隊物の名前がラビレンジャー。ロボがジェノサイドロボとかネクロフィリアロボ。
現実にはありえないネーミングが、ファンタジックな内容を後押ししている(のか?
密室トリックを解くのはミステリの常道。
意外な人物が犯人なのもお約束。
ここまではいい。問題はそのラストにある。
推理により導かれた答え、そしてそれを裏切る結末。
では真相は?というと、書かれていないのである。
天誅を受けた人物が共犯者だとすると、つじつまが合わない部分が出てくる。
可能性を完全に否定することもできないが、それにしては伏線が弱い。
考えうる可能性としては、(以下ネタばれ反転)
芳雄の推理通り、父親が共犯で、その罰として愛する者の命を奪うことによって天誅とする。
誰にでも考え付く発想だが、これは作者自身が否定したということを別の方のブログで読んだ。
やはり母親が共犯なのか。
彼女が井戸の蓋に隠れられるほど小柄だったということになるが、小学生並みに小さいという記述はない。
そもそも通報時の父親の対応も、現場に子供たちだけで行かせるなど不自然だ。
結論として鈴木君が本当に神様ならば、答えは明示されていることになる。
なぜなら神様は間違えないから。
そこにはただ真実のみがあるはずだから。
つまり彼が本当に神様なのかという謎が解かれない限り、答えは出ない。
その点に気がついたとき、私は共犯者の解明を諦めてしまった。
これはそういう話じゃないんだ。
鈴木君は、三十六歳で飛行機事故によって死ぬと定められた芳雄に、家にこもっていても飛行機が墜落してきて必ず死ぬと説明する。
定められた運命は変えられないというわけだ。
では鈴木君が天誅を下した相手の死は、定められていたのだろうか?
神様だから運命に介入することができた?
鈴木君は事件が起こる前にこう言っている。
「(君には)いろいろと愉快な思いをさせてもらうから」
少年の心を弄ぶゲーム。
それが神様のゲームだ。
これはそういうお話なのだ。
2012.03.14 ▲
![]() | キャビン・フィーバー [DVD] (2005/09/22) ライダー・ストロング、ジョーダン・ラッド 他 商品詳細を見る |
若者5人が人里離れたキャンプ地を訪れる。
酒を飲んだり、小動物をいじめたり、カップルでイチャこいたりして楽しんでいると、血まみれの浮浪者のような男が現れる。
皮膚病にでも冒されたようなあまりに凄惨な姿に、怯えた若者たちはパニックを起こし、浮浪者を追い払おうとする。
その際にたき火が浮浪者に引火、浮浪者は森に逃げ帰る。
うち沈む雰囲気に拍車をかけるように、仲間うちの一人、カレンが皮膚のただれを訴え、やがて体中から出血しだした。
助けを呼びたいが、浮浪者を追い払った際に発砲し、車が故障してしまった。
しかも浮浪者を見殺しにした負い目もある。
助けを求めて近隣の住宅を訪ねるが、そこで浮浪者だと思った男が写った家族写真を見つけ、言いだせずに戻ってきてしまう。
カレンの病状は悪化の一途をたどり、やがて感染を恐れた若者たちは、カレンを物置に閉じ込めるのだった。
酒ドラッグセックス三昧の若者たちが山奥に遊びに来て、バタバタ死んでいく。
もちろん怪しげな地元住民も彩りを添える。
そんな設定だけみれば、よくあるB級ホラーだが、死霊もゾンビもマスクをかぶった殺人鬼も出てこない。
謎の伝染病が発生となれば、ホラーというよりパニック物?
ところがウイルスパニック物にしては、原因が究明されるわけでもなく、実のところ、みんな伝染病ではなく、互いに殺し合って死んでいくのだ。
皮肉なラストも含めて、ブラックなジョークみたいな作品でした。
不要なシーンも多く、戸惑うこと間違いなし。
まずボウリング場の怪談話。全然怖くない。
怪しい登場人物も“ちょっと変”な程度なので、逆にどう受け止めていいのかわからん。
雑貨店の前にいた少女と見まごう長髪の少年は、知的障害があるのか、意思の疎通はできないのだが、いきなり「パンケーキ!パンケーキ!」と叫んで、カンフーのような動きで飛びかかってくる。
しかもそれをスローで見せられる。
怖くもおかしくも不気味でもない。
素人が個人的な趣味を寄せ集めたらこうなるだろうな、という構成。
実際、イーライ・ロスの監督デビュー作なわけだけど。
ウサギの着ぐるみは【シャイニング】の犬男へのオマージュということにされているけれど、力及ばず。
舞台が【死霊のはらわた】っぽいけど、それがなにか?
まあ、ヒットした【ホステル】よりは好きです。
2012.03.06 ▲






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