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『ねこのおうち』 柳 美里

4309024726ねこのおうち
柳 美里
河出書房新社 2016-06-17

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チンチラと雑種の間に生まれ、目も開かないうちに靴箱に詰められ、公園に捨てられた子ねこがいた。
小さな体はどんどん冷えていき、母親を呼ぶ声は掠れていく。
その小さな鳴き声に気がついてくれたおばあさんがいた。
子ねこはおばあさんの看病で命を長らえ、ニーコと名付けられ可愛がられる。
しかし、いつしかおばあさんの様子がおかしくなっていく。


“自分切り売り作家”というかなり勝手な分類をさせてもらっているこの柳美里さん。
今回、生々しいものが読みたかったので、はたしてこの人は猫好きだったかなぁと思いつつ手に取った。
予想外の全編ですます調に、子供向けの本なのか?と後悔。
「おばあさんは~~しました」の連続でげんなりする。
第一部『ニーコのおうち』では、捨て猫のニーコがおばあさんに拾われて、幸せに暮らすのだが、結末が残酷過ぎて、一度は半泣きで投げ出してしまった。
時間をおき、気を取り直して最後まで読んだが、最初の失態を取り戻そうとするかのような、エンディングが用意されていた。
最後の『ゲンゴロウとラテとニーコのおうち』に至るまでに、八年の時が流れている。
その間に東日本大震災があったことを理由に、作者が路線変更をしたらしいのだ。
そういう作家、多そう・・・
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『最果てアーケード 』 小川 洋子

4062931028最果てアーケード (講談社文庫)
小川 洋子
講談社 2015-05-15

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そこは世界で一番小さなアーケード。
薄暗く、看板の文字は消えかけ、屋根にはめ込まれた偽物のステンドグラスはすっかり煤けている。
私はそこで生まれた。父が大家だったのだ。
私が十六歳の時、町の半分が焼ける大火事で、父は死んでしまった。
いまは飼い犬のべべと一緒に暮らしている。

アーケードには、「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている。
使い古しのレース、義眼、使用済みの絵葉書、ドアノブ、勲章、遺髪レース。
訪れる客も風変わりな人たちばかりで・・・。


安定の小川ワールド。
風変わりで、不気味で、物悲しい。
あるいはここはこの世の果てなのではないか。
不吉で愛おしい物語です。

『水声』 川上 弘美

4163901310水声
川上 弘美
文藝春秋 2014-09-30

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1969年の夏、わたしは十一歳で、陵は十歳だった。
幼なじみの菜穂子と三人で、セブンアップをやたらと飲んだ。
一人で菜穂子の家に行ってしまった陵の帰りを待つとき、景色がいつもと違って見えたことを覚えている。

高校に入った頃から、菜穂子が遊びに来ることはなくなり、陵とはあまり話さなくなっていた。
わたしはママと、陵はパパと。それが我が家の食事どきの光景になっていた。
高校一年のとき、パパがわたしたちの父親ではなく、ママの兄だと知らされた。

わたしが美大に入ってすぐのころ、陵が菜穂子と再会したことを機に、ふたたび三人で会うようになった。
そういう時、陵はたいがい女の子を連れてきた。
女の子はしばしば入れ代わったが、印象の深い女の子が一人いた。
七帆子。
菜穂子と同じ響きをもつ名前の女の子だ。
無口な七帆子だが、ううん、とごく小さな声で拒否をする時には、体じゅうを使って何かをおしつぶそうとするように、声はあたりを圧倒した。
まるで叫んでいるかのように。
陵と体をかさねる時も、あの声で叫ぶのかと思った。うらやましかった。

大学を卒業すると、ふたたび菜穂子と会うこともなくなり、陵もわたしも独立して、家を出た。
わたしの気持ちはしばらく陵から離れることになる。ママが死病に侵されたと知るまで。

ママが死ぬと、パパは家をうち捨ててマンションに住んだ。
だから、わたしが陵と共に、ふたたびこの家に移り住むまでの十年間、家は無人だった。
この家に二人で戻ってきた1996年の前年、陵は通勤途中に地下鉄サリン事件に遭遇する。
ガスは吸わなかったが、構内放送がかかる少し前、階段をのぼろうと足をかける刹那、胸騒ぎを覚えて振り向いたあたりにいた誰かが、もしかするとあの後死んだかもしれない。
「一緒に住もう。」
陵が言ったのは、サリン事件のあったクリスマスだった。


続きが気になってそそくさと読み進めた。
下劣な野次馬的興味がそうさせたのではないか、とのちに思い至る。
再読ではいささか退屈だったからだ。

1969年、1986年前後、2013年、パパとママの昔話、ママの夢、と場面がめまぐるしく変わる。
多少の混乱はあるが、核心部分はぼかしつつ、うまく物語を引っ張る。
しかし近親相姦が生理的に受け入れられるかどうかも、評価の分かれ目になるのではないだろうか。
異常に濃密な家族関係が描かれているというよりも、恋愛小説としての色合いが濃いのだ。
そのくせ、実のきょうだいに欲望を持っているという“状態”が描かれているのみで、もう一歩踏み込み切れていない点にも不満が残る。
同性愛だったら、そこに説明は必要ない。たんに「同性が好き」という性的志向だからだ。
あるいは幼児しか愛せない人がいたとして、欲望の処理の仕方が特殊な人という見解。
では近親者間との恋愛とは、いったいなんぞ。
赤ん坊のころから知っている相手に、愛着を越えて性欲を抱くとはこれいかに。謎。
それはまるで先天的なもののように本作では描かれている。
まあ、人々の苦悩を明文化しないあたりが、川上さんらしいのかもしれない。
えげつない一文は妙に記憶に残った。

おこなってしまったことが、いくら禍々しいことだったとしても、よそさまに迷惑をかけないことだとしたら、そして、誰にも知られていないことだとしたら、果たしてそのことを思いわずらう必要はあるのだろうか

あと、“なほこ”を二人させた登場させた意味はさっぱり分からんかった。

『夜また夜の深い夜』 桐野 夏生

4344026500夜また夜の深い夜
桐野 夏生
幻冬舎 2014-10-08

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日本人でありながら、日本の地を踏んだことがなく、幼い頃の記憶は、アジアの田舎町を包む真っ暗な闇夜。
アジアからヨーロッパを転々とし、偽名を使い、引っ越しの時には別れを惜しむ友達にも嘘の住所を教えなければならない。
本当のことは絶対に言ってはいけない。
それが母とマイコが一緒に暮らすための掟だった。
小学校までしか行かせてもらえず、中学からは母に勉強を教えてもらった。
十八歳になったマイコは、ナポリのスラムに母と暮らし、パン屋でバイトをしている。
母は日本のNGOに属していて、海外の広報担当みたいなことをしているらしい。
時々姿を消しては、一重の目が二重になっていたり、鼻が高くなっていたり、違う顔になって帰ってくるので恐ろしい。
この人は本当にお母さんなのだろうか、とマイコは不安になるのだ。
友達もいない閉ざされた生活に不満を抱いていたマイコは、雑誌で読んだ七海という女性に手紙を書き始める。
母の仕事仲間だというタナカさんが、差し入れてくれる日本の雑誌で、七海の存在を知って以来、共感を抱いていたからだ。
テロリストである母親を持ち、父親を知らず、難民キャンプで生まれ育った七海。
マイコもまた、父親のことを知らないのだった。

ある日、マイコは街中で「MANGA CAFE」と書かれたチラシを配っている男性に声をかけられた。
シュンと名乗る青年に好感を抱き、初めてマンガを読んだマイコは、その魅力に取りつかれる。
昔の母に顔がそっくりになってきたマイコは、整形手術を強要され、シュンをあてにして家出をするが、拒まれてしまう。
途方に暮れているとき、日本人カメラマンのヤマザキに拾ってもらうが、ヤマザキに礼儀や常識のなさを指摘され、腹を立てたマイコは、彼のiPhoneとPCを盗んでしまう。
そして、密入国して来たというエリスとアナの二人組に出会う。
盗みを繰り返しながら、家を持たない三人の女たちは、強かに生き抜こうとする。

主人公のマイコは、狭量で利己的だ。
あっさりと盗みに手を染める。
倫理観が違うから外国人とはわかりあえない、というのがテーマなのだろうか。
でももともと桐野さんの書く登場人物は、こういう性格だったような。
冒険譚としては、せこい盗みを行うだけなので、面白味はない。
せっかく海外を舞台にしているのに、異国の匂いのようなものが感じられないのは残念。
あれほど母を疑い、批判し、日本に憧れていた女は、手のひらを返したように、あっさりとゴージャスな未来を選択する。
人はだれしも都合のいいことだけを信じ、楽な道を選ぶ、そういう事なのかもしれない。

『梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱』 牧村 泉

4591148238梅ヶ谷ゴミ屋敷の憂鬱
牧村 泉
ポプラ社 2016-02-24

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略奪婚から五年、珠希と史人は初台の部屋で、気楽な二人暮らしを送っていた。
ところが・・・
「俺、会社辞めることにしたから」
夫の突然の報告に、珠希は唖然とする。
広告代理店の営業職として、つい最近まで張りきって、接待だコンペだと飛び回っていたのに。
すでに辞表は提出しており、叔父のソース工場を継ぐため、実家のある大阪に戻るという。
しかも急な引っ越しとなるため、一時的にせよ姑と同居することになる。
すべてが事後報告だった。
唯一の救いは、女子大時代の友人・麻里子が近所に住んでいるということだけ。

史人の実家は敷地五十坪を上まわり、九つも部屋がある、アバウト築四十年の、鉄筋コンクリート二階建て。
そこに姑の十美子は一人で暮らしているのだが、豪邸の大半は脈絡のないがらくたで埋め尽くされていた。
引越し当日にその惨状を目の当たりにして、愕然とする珠希。
翌朝、庭に勝手に入り込んでいたのは、「トミちゃんの彼氏みたいなもんや」と言う隣家の老人・石崎。
長居する石崎に付き合わされたのち、次に訪ねてきたのは、金髪、厚化粧の態度の悪い若い女。
史人と前妻の間にできた娘・樹里亜だった。
彼氏連れの樹里亜は言い放った。「祐太朗ゆうねん。これも、今日から一緒に住むから」




文章がこなれておらず、意味がとりにくい。
主人公と夫の年齢差が十三歳と書かれていても、しばらく読み進めないと、どちらが年上なのか分からない。
樹里亜の登場シーンでは、容姿の下品さや“ガムを噛む”“あごでしゃくる”などの、視覚的にわかりやすい表現もある反面、“「う」とわずかにあごを引く、“「ああ?」と語尾を上げて応えた”というあたりは、どうもイメージしにくい。
言語と精神に障害がある設定かと一瞬思った。

樹里亜が妊娠しているらしいと、前妻にご注進にいった時も、「やったら、大丈夫やよ」と確信ありげな前妻に、「どうしてですか」と問い返す。
私は「妊娠してても大丈夫。問題ない」という意味にとったのだが、作中の珠希は「妊娠はしていないから大丈夫」と受け取ったようで、ここもまた何度か読み返すことになる。
文章が下手ではないのに、リーダビリティーに欠けるとはこういう事か、と感心した次第。

作者の独りよがりな文章に惑わされながら、読後、得られるものはない。
三十代の後妻が、子供を作る(あるいは作らない)ことついて、まったく言及していないのは不自然だし、ゴミ屋敷という設定は活かされていないし、放火事件も幽霊騒動も中途半端。
登場人物がみんな身勝手で、不快でしかない。
一言でいえば、長文のyahoo知恵袋。
カテゴリー 生き方と恋愛、人間関係の悩み>恋愛相談、人間関係の悩み>家族関係の悩み みたいな。
しかも回答者に責められまくるヤツ。
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小日向 ゆう

Author:小日向 ゆう
読むのも書くのも好き!

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