2008/03/09 (Sun) 『聖灰の暗号』を読む

聖灰の暗号 (上)聖灰の暗号 (上)
(2007/07)
帚木 蓬生

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聖灰の暗号 下 (3)聖灰の暗号 下 (3)
(2007/07)
帚木 蓬生

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1198年イノセント三世が教皇位についた翌年、異端者排斥の教令が出された。
その10年後にはカタリ派の信徒たちの大虐殺が起こり、以降120年にわたって続く。

歴史学者の須貝彰はローマ教会の歴史において、異教として迫害されたカタリ派の調査を行っていた。
須貝は市立図書館の収蔵庫で偶然、ある手稿を見つける。
修道士レイモン・マルティの名で記されたそれには、異教徒が杭に繋がれ焼かれる生々しい描写があった。

現代ではカタリ派といっても、過去に滅んだ異教であるという認識しか一般的にはない。
須貝は異端の烙印を押され、闇に葬られたカタリ派の真実を求めて、第一の手稿を元に、さらなる手稿を捜し求める旅に出た。
しかし、彼の周りで不審な死が次々と起こる。

過去に行われた大虐殺の詳細が手稿の発見によって明らかになれば、ローマ教会の権威の瑕疵となることから、ローマ教会の抱える組織の手によるものと判断した須貝は、精神科医クリスチーヌ、ナイフ職人エリックの協力を得ながら、手稿に隠された暗号に挑む。

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2008/02/18 (Mon) 『国銅』を読む

国銅〈上〉国銅〈上〉
(2003/06)
帚木 蓬生

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国銅〈下〉国銅〈下〉
(2003/06)
帚木 蓬生

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天平15年(七四三年)長門周防地方の榧葉山(かやばやま)に奈良登りと呼ばれる地があった。
そこに集められた人足たちは日々、斜面に開いた真っ暗な穴に潜り、溢れ出る水や底無しの暗闇や、いつ襲いくるか判らない地底の毒気を脅威に感じながら、働いていた。
璞石(はく)を削り、自ら運び、釜で熱し、銅を取り出す。
人足の仕事は命がけであり、仕事を放り出して逃げれば逃亡民となるしかない。
課役の任期はあってないようなもの。
大仏建立の勅が出たいま、人足たちが故郷に帰る日はいつとも知れなかった。
国人(くにと)は兄の広国に助けられながら、過酷な課役をこなしていた。
寡黙で頼りになる兄だったが、事故により、帰らぬ人となってしまう。
傷心の国人だが、兄が生前親しくしていた僧景信と出会うことによって、学ぶことに魅せられていく。

当時、人足で文字の読み書きができる者は稀有であったが、国人は自ら望んで景信から文字を習う。
やがて奈良登りから、大仏建立のために都に上ってからは、二人の衛士と出会い、詩に、歌に触れ、労役は過酷ながらその心はどこまでも自由であり続けた。

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2007/04/01 (Sun) 『カシスの舞い』を読む

カシスの舞い カシスの舞い
帚木 蓬生 (1983/01)
新潮社

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舞台はフランスのマルセイユ。
精神学の先鋒ポロー教授のもとで精神科医として勤める水野。
彼は、恋人であり研究者であるシモーヌとともに彼女の伯父の屋敷を訪れた。
しかし訪れるや否や聞かされたのは、伯父の悲報だった。
腎臓提供の意思を生前示していた伯父の遺体は、慌しく救急車で運び出されるのだが、戻ってきた遺体には開頭術の痕跡があった。
そして伯父夫妻が麻薬に侵されていたことも明らかになった。

時期を同じくして、解剖学教室で研究用遺体の切れ端の中に新鮮な遺体の残骸が混入していたことが事件の発端となる。

なぜ脳が摘出されたのか。
捨てられた遺体は誰なのか。
そして教室全体を覆う不穏な陰の正体は何なのか。

狂気をテーマとして書かれた作品だ。
アンフェタミン、ヘロイン中毒による狂気。
精神の病における狂気。
そして研究者が時に陥る、研究に邁進するがゆえの狂気。
マッドサイエンティスト物と云ってしまえば、事足りるだろう。
好きな作家だが、独特の語り口が生かされていない。
展開がまだるっこしい。
逮捕劇を入れるのなら、もっと早い段階で警察視点の章を織り込んでおくべきでなかったか。
最後の手紙の長文はいわば謎解きにあたるのだろうが、素人にはまったく意味がわからない専門用語の羅列だ。
もちろん一切の解説もない。

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2007/01/11 (Thu) 『空の色紙』を読む

空の色紙 空の色紙
帚木 蓬生 (1997/11)
新潮社

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3作収録
『空の色紙』
『墟の連続切片』
『頭蓋に立つ旗』

古臭い。何しろ30年近く前の作品だ。
すべて医療関係のお話。

『空の色紙』
鹿児島の片田舎で嫉妬からアル中の父親が息子を殺害する事件が起こった。
被告の精神鑑定を任された医師小野寺は、現場になった家を訪れ、家族との面接を行う。
そうして家族の証言から伺える父親の姿は人外のものだった。
しかし実際に被告との面接で受ける印象は、確かに現実の誤認、極度の妄想が見られるものの、一見すれば平凡な男としか見えない。
精神病院に措置入院となったところでいずれ退院してくることは明らかだが、その後の家族の有様は想像に難くない。
こうして血生臭い顛末を掘り起こしたところで息子が生き返るわけでなし。
かえって不幸の輪郭を濃くするだけではないかと小野寺は述懐する。
そんな小野寺自身も30年に亘る妻への、あるいは彼女の元夫である兄への屈託を抱えていた。

上記の息子殺しともうひとつ、夫婦間の毒殺未遂事件が描かれているのだが、
それぞれの出来事を列挙する必然性がないような気がする。
確かに家族の形、夫婦の形が見え隠れするのだが、無理やり繋げているようにみえる。


『墟の連続切片』
背景に学生運動があるのだが、正直わけわからん。
助手(この作品の場合は講師)が論文を書き、教授がちょこっと手を加えて、連名で発表というのは現在も行われている“習慣”だろう。
そして実験結果に脚色を加えることも。
それを青医連(学生自治会らしい)に糾弾され、責任のなすりつけ合いをするという話だ。
そして最後には“壊れて”しまう。

わー人が死んでる、死んでる!
え〜?何それ。石、投げんの?


どう評価すればいいのでしょうか・・・(´Д`)


『頭蓋に立つ旗』
これもまた学生運動にまつわる話。
落第生だってバシバシ出しちゃうスゲー厳しい石郷先生は骨学の先生。
そんな石郷先生は解剖実習に先立って学生達に誓約書を要求するのだ。
内容は、遺体の一部なりとも粗末に扱わず、最後まで解剖を遂行することという趣旨のもの。
そんなの当然じゃんと私は思うのだが、いかんせん学生たちの反感を買ってしまう。
実習で頭蓋骨が一個なくなっちゃったのを学生のせいでは?とポロリと漏らしたのをきっかけに、学生たちの誓約書ボイコット運動が始まったのだ。
しかし誓約書がなければ解剖実習も行わない!皆落第にするしかない!
と互いの根競べが始まってしまう・・・

と、こういう話なのに、なぜか九大で行われた人体実験のワンシ-ンが挿入されている。
何故だ!

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2006/11/01 (Wed) 『安楽病棟』を読む

安楽病棟 安楽病棟
帚木 蓬生 (1999/04)
新潮社

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舞台は痴呆病棟。そこに入院しようとする老人(あるいはその家族)が担当医に語りかける形で始まる。
それぞれが様々な理由を抱え、家を離れることになる過程が綴られる。
足腰が衰えてこのままでは家族に迷惑がかかると訴える者、妻に先立たれ、独り身では生活に不安がある者、家庭での介護に限界を感じ、入所させてもらおうと頭を下げる者。
10のケースが並べられたあと、次は若き城野看護婦の視点から病棟内での出来事がこれもまた医師に語りかけるカタチで綴られる。

人は老いる。しかし、医学の発達のせいで体はなかなか死なない。
脳だけが取り残されたように老いていく。
一口に痴呆と云っても、ぼけ方は様々。それまでの人生が集約されたものが呆けに現れてくる。
校長先生をしていた人物に呆けているからといって子ども扱いしても云うことを聞いてはくれない。
トイレに行かせるには「会議が始まるのでトイレを済ませてください」
女好きの元社長を風呂に入れるのは「今日は若い子を揃えております。どうぞ」

リアルに描かれる痴呆患者達の生活はとても興味深い。
七夕会やピクニック、地蔵さん参り。
行事を通して表れるのは生き生きとした個性だ。

ご飯を食べた10分後に「食事はまだか」という患者たちでも、忘れていないものがある。
分け合い、助け合い、感謝する気持ち。
隣席の人の好物がおやつに出れば、分けてあげる。
連れ立って歩くときは足の弱い者を庇う。
言葉には出なくとも介護士たちに見せる感謝の態度。

しかし病棟では回復の見込みのない患者達が時につれ、亡くなっていく。
やがて城野看護婦はある疑問を持ち始める・・・。


病棟内のつれづれは本当に面白く読めた。
ジン・・・とくる部分もあった。
だからこそ、無理に挿入したような“事件”“謎解き”の部分が惜しくもあった。
心に迫る文を書く方なのだから、ミステリというジャンルにこだわる必要はないだろう。
もう一点残念だったのは、最初の10章で出てくる患者達の名前が看護婦視点になったときに容易に浮かんでこないことだ。
それぞれの個性は印象に残っているのだが、名前と一致しない。
何しろそれぞれの章の中には一度しか名前が出てこないので覚えようがない。
後になってもう一度名前を探して読み返したくらいだ。
折角なので、のちほどここにメモしておこうと思う。


↓こちら
『地蔵』柴木
『八十二万』坂東
『腰』浦
『家内』吉岡
『うつ』池辺
『校長』下野
『サーモン』高倉
『アルコール』三須
『家出』園地
『慰安婦』菊本

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