2007/09/29 (Sat) 『川の光』を読む 松浦 寿輝

川の光 川の光
松浦 寿輝 (2007/07)
中央公論新社

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クマネズミのタータとチッチ兄弟は、お父さんと3匹で、川のそばの先祖代々から続く巣穴に暮らしている。
お母さんは死んでしまっていないが、いつも聴こえる川のせせらぎがタータにとっては子守唄のようなものだった。
そして川原は兄弟にとって、追いかけっこをしたり、小石を蹴飛ばしあったり、遊ぶには事欠かない場所だ。

ひょんなことからゴールデン・レトリバーの子犬、タミーと友達になり、平和な毎日を送っているはずだったのだが、ある日突然川原にたくさんの人間が押し寄せ、杭を打ち、地を均し、木を伐り倒し始めた。
タータたちの暮らす川にフタをして暗渠とする工事が始まったのだ。
3匹は川に生きるネズミ。
人ごみの中では暮らせない。
新たな巣を求めて工事の及ばない上流へと旅に出るのだった。

旅先で3匹はさまざまな困難に遭遇する。
同じように川を遡るイタチに襲われ、命からがら逃げ出す。
かと思うと川沿いに遡ろうとするネズミたちをことごとく阻止するドブネズミ軍団に痛い目に遭わされ、街中を強行突破する破目に陥ったり・・・・。
しかし反対に価値ある出会いもあった。
猫のブルーは、お父さんたちとはぐれてしまったタータを面倒がりながら、世話をしてくれる。
モグラの未亡人は我が子同様にタータとチッチを可愛がり、こともあろうにお父さんに流し目を送ったりもする。

読売新聞の夕刊に連載された作品である。
昨今、大人にも人気のある児童書には、主人公に近しい人物が衝撃的に死を迎えることが多い。
確かにその方が読み物としての感動(動揺、悲しみ)は与えられるだろう。
夢物語ではない現実の厳しさを教える意味での死もあろう。
それらを今ここで是非するつもりはない。
ただ、それらに慣らされた私はこの作品を読んで、実に素直に一喜一憂させてもらった。
残酷な死が描かれてもいるが、それはエッセンスと見ていいだろう。
ネタバレになるが、3匹は一匹も欠けることなく、旅を終える。
あまつさえ次なる冒険を匂わせるようなエピローグさえある。
もっともあとがきには、こうしたものはもう二度と書くことはないだろう、と著者は断っているが。

小説としては物足りない感もある。
お爺さんネズミの移動経路についての謎解きもない。
悪い奴は結局痛い目に遭う、という勧善懲悪のセオリーに遵ってしまっている。
新聞小説にしては随分子供じみている。
お父さんとタータはネズミ色だと記述があるのに、挿絵では茶色である。
それらを差し引いても、物語全体を流れる川のように連綿と注がれる、作者の生き物たちへの愛情は感じられるのであった。

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