2007/10/29 (Mon) 『軟弱者の言い分』を読む 小谷野 敦

軟弱者の言い分 軟弱者の言い分
小谷野 敦 (2001/03)
晶文社

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『ファッションに無関心である自由』
朝日新聞の記事に「すてきなオヤジ」と題してファッションに関することが書いてあった。
若者の茶髪やピアスに大人が不快感を示すが、自分たちも若い頃、制服を改造して大人たちに怒られていたことを考えれば、おかしな話だ云々。
小谷野氏はこれに対して「少なくとも私は制服に細工したりしなかったし、ほかにもしなかった人はいるはず」と書いている。
なるほどそういう発想の持ち主なのか、と素直に思った。
こういう事はなかなか云えたものではない。
多くの人は「悪かった」ことを格好いいと思っている節がある。
よく聞くのは、子供に対して父親が「お父さんは昔は悪かったんだぞぅ」と威張るが実はいじめられっ子だったという笑い話。
これが端的に『悪=かっこい』の図式を表している。
そして『引きこもる若者たち』から抜粋。
引きこもりの末、自ら命を絶った女性の父親の弁「いま、価値観の多様化とか言うけれど、全然、そうなってない。スピーディーに、ネアカで・・・・・。その逆の子は、生きられないじゃないですか」
同意。誰もが流されている。それに乗れない人間は落ちていくのみなのか。

『食事は好き?』
柳田國男(民俗学者)を引き合いに出し、食事が面倒くさくて仕方がないという話をしている。
まったく同感。
一日に3回も食事に時間を割くなんて、やってられない。
食べることが好きな人間には分からないだろう、とはそのとおりだと思う。
丸一日食べなくてもいい日すらある。
なぜ食べるかといえば仕方がないから。
かといって味にこだわらないかといえば、不味い物は食べたくない。
どこまでもわがままw
そして、子供はえてして食事が嫌いなものである。
その延長線上にいるのが、著者や私のような食事嫌いなのかもしれない。
ただ私の場合は『吐く』ことに嫌悪感はないので、さらに性質が悪いといえようか。

『分別中毒』
小谷野氏が大阪から東京都西部に越してきて憤慨したことがある。
ゴミの分別方法の厳しさにである。
私も驚いたのだが、電話代の請求書などの宛名がビニールで窓になっているやつ。
あれもちゃんと剥がして分別せよ、ということだそうだ。
すげー細かい。
そもそもそんな封筒を作ったり売ることを禁止すればいいではないか、と怒っている。
しかしやっているうちに著者はそれが快感になってきたそうだ。
もともと嫌いではないらしい。
大阪在住時も瓶の口のビニールキャップを「さあ泣き別れだよお」などとやりながら楽しく外していたそうなので、ホンモノだ。
これは今度自分でも云ってみようと思う。

ちなみに[付記]によると、名古屋ではさらに分別基準が厳しいらしく、某大学教授は論文を書く暇がないといって、東京へ引越し新幹線で通っているそうだ。
名古屋恐るべし。

『にわか文藝時評家の日々』
過去の書評を載せた章である。かなり切羽詰って書いた様子だ。
以下抜粋。『鈴木の文章は独特の艶と色気を持ち、かつヒューマンである。鈴木は『短大卒』という学歴を誇りに持っているが、もうこういう文章はへたに四年制の大学なんか出ているとと書けないのかな、と思わせる』

本書の中でこのように『四年制の大学』云々書いた箇所について言い訳じみた記述がある。
非常勤講師として短大で働いた経験を踏まえ、短大生のなかにはとても意欲的な学生がおり、四年制の学生には甘えがある、短大で教えていた頃が、そういった点では、妙に懐かしい、というようななんとも不可解な文章。
学歴が低い奴には魅力的な文章が書けない、と少なからず思っていたと正直に云えばいいのに。
ちなみに私が常々思うのは、社会的地位は高い様子なのに、まともな文章が書けない人たちのことである。
おそらく四大を出て、現在は人を使う立場にあり、あらゆる書類を作成し、目を通しているだろう人たちのことである。
まったくもって支離滅裂で、話し言葉かというと、それにしても意味が通らない。
読む側の想像力に頼っているとしか思えない。
論理的思考は出来るはずなのに、読める文章が書けない人というのは、やはりどこかの回路が断線しているのであろう。

そのほかには・・・
宮崎哲弥は恋愛結婚なのだろうか。すると恋愛と共同体の根本的な齟齬について書いてもらいたい。
同意。興味あり。

荒川洋治(詩人)さんは「党派心」のない人で友達が少ないけれど文章が気持ちいい。
仲間の多い人の文章には気をつけた方がいいそうだ。
うん。本当だな。つるむヤツは苦手だ。

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