2007/07/03 (Tue) 『父からの手紙』を読む

父からの手紙 父からの手紙
小杉 健治 (2003/07/22)
NHK出版

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結婚を間近に控えた麻美子は母と弟の伸吾との3人暮らし。
父親は10年前、麻美子が中2のときに出て行ったきり、毎年誕生日に手紙を寄越すだけの存在だった。
思春期の父親が疎ましく思える時期に、母と離婚して去って行った父親だが、その手紙には子供たちを案じ、励ます言葉がしたためられている。
おそらく他の女性の元に行ったであろう父の身勝手に、怒りを覚えつつも、憎みきれない。
それは手紙の中に溢れんばかりの愛情を感じることが出来たからだろう。

麻美子の結婚相手高樹は経営コンサルタントのやり手社長で、婚約しているにもかかわらず、周りに女の影がちらついている。
にも関わらず麻美子が黙っているのは、両親の結婚生活の破綻を目の当たりにしたことによって、既に結婚に対するあまやかな幻想など持ち合わせていないからだ。
本心では父の幼馴染であり、彼女たちが父親代わりと慕ってきた山部の息子、信勝に思いを寄せながらも、麻美子は割り切った結婚に望もうとしていた。
それも偏に山部が一代で興した会社を守るためだった。
時代の波に乗り遅れた山部製作所はいま窮地に立っている。
高樹の融資が引き出せれば、再興の望みが持てる。
そんな企みを胸に秘めて、麻美子は嫁ごうとしていた。
しかし麻美子の本心は知らずとも、高樹の本性を知っている弟の伸吾は
なんとか姉に結婚を思いとどまらせようとしていた。

その矢先、高樹の部屋から高樹の愛人の遺体が、遅れて高樹自身の遺体が産業廃棄物の塵収集場から発見された。
そしてこともあろうか伸吾が殺人の容疑を掛けられ、拘留されてしまうのだ。
心労で母は倒れ、融資の立ち消えによって破産寸前の山部親子も当てに出来なくなり、麻美子は単身、事件の真相に挑むのだった。
そして事件の陰に父親を見た麻美子の父親探しの旅が始まる。

そしてもうひとつの物語。
圭一は刑事殺しの罪を償い、9年目にして出所してきた。
彼を迎えてくれたのは伯父のみ。
出所の半年前まで面会に来てくれていた恋人の歌子は姿を消していた。
孤独の中で彼を苦しめる記憶は殺害の寸前の刑事とのやり取りだ。
刑事のある言葉に逆上して犯行に至ったはずなのだが、どうしても思い出せない。
事の発端は義姉の不倫疑惑だった。
兄は小さな電器店を営んでおり、大型量販店の進出により、経営難に陥っていた。
そんな折、妻みどりとの間に念願の赤ん坊を授かる。
しかし連帯保証人になっていた友人が失踪。大きな借金を背負うことになる。
そしてある日、兄は圭一に相談を持ちかけてくる。
「みどりが浮気をしているらしい。後を尾けてみてくれないか」
まさかと思いつつ、義姉を尾行して圭一が見たものは男とホテルに入るみどりの姿だった。
みどりに密かな思いを抱いていた圭一は愕然とするが、それを聞いた兄の絶望はさらに計り知れなかった。

ついに精神に異常をきたした兄は灯油をかぶって焼身自殺を遂げるのだが、その事件に疑問を持ったひとりの刑事がいた。
圭一が殺害した犬塚その人だった・・・・


麻美子は父の行方と事件の犯人を捜し、圭一はみどりの行方と自分の記憶を探す。
題材としてはいいのだが、全体的に説得力に欠ける。
どちかというと“うじうじおっとり”タイプの麻美子が打算で結婚しようするのは違和感がある。
それに麻美子も圭一もただ漫然と縁の地を訪ねてみたり。
他にやりようがあるのではないだろうか。
そもそも変死体の身元を、ろくに検死もせずに、家族の証言だけで決め付けることなんてあるのだろうか?
信勝が酒と女におぼれるのもパターン化した茶番劇のようだ。

.カ行の作家 小杉健治 | trackback(0) | comment(0) |


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