![]() | 安楽病棟 帚木 蓬生 (1999/04) 新潮社 この商品の詳細を見る |
舞台は痴呆病棟。そこに入院しようとする老人(あるいはその家族)が担当医に語りかける形で始まる。
それぞれが様々な理由を抱え、家を離れることになる過程が綴られる。
足腰が衰えてこのままでは家族に迷惑がかかると訴える者、妻に先立たれ、独り身では生活に不安がある者、家庭での介護に限界を感じ、入所させてもらおうと頭を下げる者。
10のケースが並べられたあと、次は若き城野看護婦の視点から病棟内での出来事がこれもまた医師に語りかけるカタチで綴られる。
人は老いる。しかし、医学の発達のせいで体はなかなか死なない。
脳だけが取り残されたように老いていく。
一口に痴呆と云っても、ぼけ方は様々。それまでの人生が集約されたものが呆けに現れてくる。
校長先生をしていた人物に呆けているからといって子ども扱いしても云うことを聞いてはくれない。
トイレに行かせるには「会議が始まるのでトイレを済ませてください」
女好きの元社長を風呂に入れるのは「今日は若い子を揃えております。どうぞ」
リアルに描かれる痴呆患者達の生活はとても興味深い。
七夕会やピクニック、地蔵さん参り。
行事を通して表れるのは生き生きとした個性だ。
ご飯を食べた10分後に「食事はまだか」という患者たちでも、忘れていないものがある。
分け合い、助け合い、感謝する気持ち。
隣席の人の好物がおやつに出れば、分けてあげる。
連れ立って歩くときは足の弱い者を庇う。
言葉には出なくとも介護士たちに見せる感謝の態度。
しかし病棟では回復の見込みのない患者達が時につれ、亡くなっていく。
やがて城野看護婦はある疑問を持ち始める・・・。
病棟内のつれづれは本当に面白く読めた。
ジン・・・とくる部分もあった。
だからこそ、無理に挿入したような“事件”“謎解き”の部分が惜しくもあった。
心に迫る文を書く方なのだから、ミステリというジャンルにこだわる必要はないだろう。
もう一点残念だったのは、最初の10章で出てくる患者達の名前が看護婦視点になったときに容易に浮かんでこないことだ。
それぞれの個性は印象に残っているのだが、名前と一致しない。
何しろそれぞれの章の中には一度しか名前が出てこないので覚えようがない。
後になってもう一度名前を探して読み返したくらいだ。
折角なので、のちほどここにメモしておこうと思う。
↓こちら
『地蔵』柴木
『八十二万』坂東
『腰』浦
『家内』吉岡
『うつ』池辺
『校長』下野
『サーモン』高倉
『アルコール』三須
『家出』園地
『慰安婦』菊本
.ハ行の作家 帚木蓬生 | trackback(0) | comment(0) |
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