![]() | パズル・パレス (上) ダン・ブラウン (2006/04/04) 角川書店 この商品の詳細を見る |
![]() | パズル・パレス (下) ダン・ブラウン (2006/04/04) 角川書店 この商品の詳細を見る |
NSA (国家安全保障局)の暗号解読員スーザンと大学講師デヴィットは
結婚を約束する仲だ。
そのデヴィットが、スーザンの上司であるストラスモアに、スペインから
ある人物の所持品を持ち帰って欲しいと依頼を受ける。
そしてスーザンは土曜日にも関わらずストラスモアに緊急の出勤を命じられる。
世界最高の非公式暗号解読機トランスレータに解読できない暗号があるというのだ。
暗号とは詰まる所、文字の組み合わせである。
理論的にはその組み合わせは多数にして無限ではない。
計算速度のいかんに関わらず、総当たりで行けば、いずれは解読できるものなのだ。
単に解読に10年掛かっていては、役に立たないというだけのことだ。
その解けない暗号はない、という鉄壁の法則を覆す暗号が編み出されたというのだ。
それは常に暗号の元となる平文が変遷していくというものだ。
素人にはわかり辛いのだが、どんなに遠くとも止まっていればいずれは
捕まえられるが、それが動き、変化し続けるなら捕らえる事はできない、
という解釈で間違いないと思う。
そしてそのアルゴリズムを産み出したのがエンセイ・タンカドという
元NSAの暗号解読員だった。
このアルゴリズムがインターネット上で公開されたら、たちまち合衆国が
これまで秘密裏に取得してきたテロや犯罪情報が掴めなくなる。
それを阻止したければこれまでひた隠しにしてきたトランスレータの存在を公表しろ、というのがタンカドの要求だった。
しかしその要求が飲まれるまでもなく、タンカドは突然死してしまう。
NSAを窮地に貶めるアルゴリズムを遺したまま・・・
そしてデヴィットが受け取ることになるのは、このタンカドの遺品なのだ。
突然死してしまったタンカドがどこかに隠し持っていたらしいパスキーが
あれば、この事態を打開できる。
しかし、それらしい指輪が旅行客の手に渡ってしまったらしいことから、
デヴィットの、指輪を求める長い長い旅が始まるのだった。
ヒロインは容姿端麗、頭脳明晰。ヒーローも紳士で賢く親切。
読者の神経を逆なでするような設定である。
そして『天国と地獄』の読者なら、事態の黒幕が誰なのかが容易く想像が付くだろう。
使われる暗号も格別感嘆するようなものでもなく、面白みに欠ける。
総じて評価は低い。
そして、キーマンであるこのエンセイ・タンカドという人物、日本人なのだ。
いったいどんな字を当てるのだろう。
もうひとり日本人が出てくるのだが、そいつはトクゲン・ヌマタカというのだ。
そんでそいつの経営する会社はヌマテックである。
笑うしかないだろ?
しかし、この笑うしかない名を持つ男が云う事は正しいように思える。
確かにいまNSAが行っていることは正義かもしれない。
テロを未然に防ぎ、犯罪の撲滅に尽力している。
まさに合衆国の番人だ。
しかしもしも今の政府がもっと独裁的な様相を呈してしまったら?
国民は身を守る術を失ってしまうことになる。
【誰が番人の番をするのか】
このひと言に尽きるだろう。
法に関する話は「12番目のカード」と多少リンクする部分もあるように感じた。
.海外作家 ダン・ブラウン | trackback(0) | comment(0) |
![]() | わたしのグランパ 筒井 康隆 (1999/08) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
中学生の珠子は両親と祖母の4人暮らし。
その家に15年の刑期を終え、祖父(グランパ)が帰ってきた。
初めて会うグランパは穏やかで優しげ、刑務所帰りにも拘らず、
町民たちには信頼されている様子だった。
反面、収入がないにもかかわらず、毎日のように飲みに出かける
不審な点もあった。
しかし珠子の周りには、それを気に掛けていられないくらい問題が
山積みだった。
地上げ屋による陰湿な嫌がらせ、それに端を発する両親の不仲。
学校でのいじめ。絶え間ない校内暴力。
珠子がいじめられていることを知ったグランパのとった行動は、
正当とは云えないかもしれないが、確実に珠子を救った。
珠子自身も自分の持つ力をグランパに気づかされ、己で苦難を
切り開くことが出来た。
そして両親の不仲(特に母親のヒステリー)の原因もあっさりと
見抜いてしまう
(しかしコレは誰でもわかる次元の話だ。)
そして校内暴力を起こす生徒たちもグランパの魅力にはイチコロなのだ。
次々と珠子の憂鬱を消し去っていくグランパは、ついにヤクザ相手に
立ち向かうことになる……
全般的にんなこたねえだろ?的な展開である。
果たして中学生の女の子が同級生を一喝したくらいでイジメが止むか?
びびって泣くか?小便漏らすか?
ジイサンがお前さんたちのためを思って警察には言わなかったんだ、
なんて慈悲振りまいたところで、教室のガラス窓ぶち割って喜んでた
中坊が心を入れ替えるか?
漫画だよ漫画。一昔前の漫画にありそうな話だよ。
あ、それから荒川紀子って超美少女のズーレーの女の子がキモい。
筒井氏なら珠子の身代わりに紀子が強姦されて、怒り狂った珠子が
自動小銃ぶっ放すとかの方が性に合ってたんじゃないかと思う。
それからグランパサイドの心理描写はほとんどないのだが、
その点を描きこんでくれた方が興味深かっただろう。
もっともそれは野暮なことではあるが。
.タ行の作家 筒井康隆 | trackback(0) | comment(0) |
![]() | 12番目のカード ジェフリー ディーヴァー (2006/09) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
ハーレムの高校に通う十六歳の少女ジェニーヴァは博物館で調べものをしていた。
そこで一人の男に襲われそうになるが、危機を悟った彼女は、機転をきかせその場を逃れる。
現場にはレイプ道具のほかに、【吊るされた男】のタロットカードが残されていた。
初めは強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックスたちだったが、
その後も執拗にジェニーヴァを付け狙う犯人に、別の動機があることに気づく。
それは米国憲法を根底から揺るがす百四十年前の陰謀に結びつくものだった。
そしてそこにジェニーヴァの先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンが関与していたらしいのだ。
事件はこの“百四十年もの”の証拠物件の解明とともに進展を見せていく。
今回はライムの身体能力の回復の可能性、ロン・セリットーの心的葛藤も
描かれており、ファンには外せない一作である。
しかし!
全体の大幅なパワーダウンは否めない。
いつものページを繰る手が止まらない、あのめくるめく感じがないのだ。
それにラスト近くの思わせぶりな書き方はあざと過ぎる。
もうお腹いっぱいって感じ。
第一訳がおかしいだろ。
レイプパックって何だ?
マイクロフィッシュって?
日本語訳なんだから日本人に判るように訳してくれ。
.海外作家 ジェフリー・ディーバー | trackback(0) | comment(0) |
![]() | 少し変わった子あります 森 博嗣 (2006/08) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
大学教授の小沼は後輩から変わった小料理屋の話をきく。
店に名前はなく、場所も一度として同じ場所にはない。
女将の名を尋ねることも許されず、友人と連れ立って訪れる事はできない。
必ずひとりで。
食事は特に限定されず、和食だったり洋食だったり。
そしてなんでも、オプションメニューとして、初対面の女の子と一緒に
食事をすることができるというのだ。
もちろん一緒に食事をするだけである。
さまざまな女性が現れるが、二度と同じ女性には会えない。
もちろん名を尋ねることも出来ない。
ただ会話を楽しむ。あるいは静寂を。
そして決まって彼女たちの作法は美しいのだ。
今回の作品でいったい何を目指したのだろう。
読者は会話の内容をともに考え、楽しむしか仕様がないようだ。
もちろんそれが悪いとは云わないが、ストーリーに魅力があるとは到底思えない。
そしてあの、オチらしきモノの致命的な古臭さ。
しかし、森氏の作品にはそもそも変わった子しか出てこない気がするのだが?
.マ行の作家 森博嗣 | trackback(0) | comment(0) |
![]() | カシスの舞い 帚木 蓬生 (1983/01) 新潮社 この商品の詳細を見る |
舞台はフランスのマルセイユ。
精神学の先鋒ポロー教授のもとで精神科医として勤める水野。
彼は、恋人であり研究者であるシモーヌとともに彼女の伯父の屋敷を訪れた。
しかし訪れるや否や聞かされたのは、伯父の悲報だった。
腎臓提供の意思を生前示していた伯父の遺体は、慌しく救急車で運び出されるのだが、戻ってきた遺体には開頭術の痕跡があった。
そして伯父夫妻が麻薬に侵されていたことも明らかになった。
時期を同じくして、解剖学教室で研究用遺体の切れ端の中に新鮮な遺体の残骸が混入していたことが事件の発端となる。
なぜ脳が摘出されたのか。
捨てられた遺体は誰なのか。
そして教室全体を覆う不穏な陰の正体は何なのか。
狂気をテーマとして書かれた作品だ。
アンフェタミン、ヘロイン中毒による狂気。
精神の病における狂気。
そして研究者が時に陥る、研究に邁進するがゆえの狂気。
マッドサイエンティスト物と云ってしまえば、事足りるだろう。
好きな作家だが、独特の語り口が生かされていない。
展開がまだるっこしい。
逮捕劇を入れるのなら、もっと早い段階で警察視点の章を織り込んでおくべきでなかったか。
最後の手紙の長文はいわば謎解きにあたるのだろうが、素人にはまったく意味がわからない専門用語の羅列だ。
もちろん一切の解説もない。
.ハ行の作家 帚木蓬生 | trackback(0) | comment(0) |
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