![]() | 蚊トンボ白鬚の冒険 (2002/04) 藤原 伊織 商品詳細を見る |




倉沢達夫は水道職人として働いている。
どこにでもいるありふれた青年・・とは言い切れない。
幼くして母を亡くし、無口だった父親も、高校時代に亡くしている。
どこか暗い眼をした青年だった。
身体的な障害を理由に、陸上を諦めてからは、ただ生きるべくして生きてきた感がある。
人に媚びることなく、ドライで無関心、だけれども、無鉄砲に、まっすぐ。
オヤジ狩りの場面に遭遇した達夫は、被害に遭っているのがアパートの隣人の黒木だと気付き、警察へ通報すべく、その場を離れようとした。
すると右手が自分の意思と関係なく勝手に動き出し、ポケットの入っていたパチンコ玉を弾いた。
玉はナイフを持った少年に命中し、図らずも黒木を助ける結果となった。
わけもわからず、部屋に戻った達夫の頭の中に、突然呑気な声が聞こえた。
声の主は名乗る。
「おいらは蚊トンボの白鬚」
ひょんなことから達夫の頭の中に潜り込むことになった蚊トンボは、自我を持ち、言葉を解し、それどころか自分には宿主である達夫の筋肉を操る力があるとまで言い出す。
シラヒゲには、筋肉を収縮させるために必要なカルシウムイオン濃度を、瞬間的に通常の千倍くらいまであげることが能力が備わっていた。
つまりわずかな間ではあるが、宿主の筋肉を通常の千倍くらいまで強化できる。
まるでスーパーマンのようだが、そのパワーを長時間持続することはできない。
達夫がドライなのは、そのことを何かに利用しようとはしない所だ。
何事もなければ、頭にシラヒゲが住んでいることを、自然と受け入れてしまい兼ねなかった。
しかし、黒木が実はヤクザに追われる身だと知った達夫は、不穏な事態に、徐々に巻き込まれていってしまう。
とんでも、な設定である。
だって頭の中に蚊トンボが住みつくんだぜ?
果たしてそれが蚊トンボである必要があったのか。
なぜ「おいら」って時代遅れな口調なの?
達夫の過去の記憶を掘り起こすことも可能という設定だが、すべてというわけではない。
語り部にとっては都合の良い設定だ。
到底説明のつくものでもないからか、その点が詳しく究明されることはない。
しかしそれでもいいじゃないか、という気にさせてくれる作品だった。
そう、どうでもいいのだ。
重要なのは個性的なキャラクタだちがどう動くか、なのだ。
いささかステレオタイプで漫画チックな性格設定。
あまりにもべらんめぇ口調なのが、気に障るが、そこはご愛嬌。
あたしはまっすぐで一本筋の通ったやつが好きだ。
ラストは図らずも泣いてしまった。
気にかかったことをひとつ。
黒木が貧困の副産物だと評した複数の偽名の銀行口座についてだ。
黒木は困窮していた学生時代、千円貯まるとそのつど新しい銀行に足を運び、預金口座を作っていた。
もし通帳が盗まれた場合、全財産を失わずにすむためらしいのだが、果たして変名で作る必要があったのだろうか?
たんにそれぞれを別々の場所に管理しておけばよかっただけの事。
第一、変名となるとその数だけ別名の印鑑も必要になる。
当時は今のように百円では印鑑を買えなかったはずだ。
これは指摘されてしかるべき齟齬ではないのか。
.ハ行の作家 藤原伊織 | trackback(0) | comment(2) |
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comment
ご愛嬌
麻雀好きのテキトーな作家のこと、ご愛嬌で楽しく読もう^^
僕も読んでみます!
2008/04/30 22:38 | kanta [ 編集 ]
コメントありがとう^^
これ かなり前に読んで 当時のメモだけを頼りに書いた感想です
手元に資料のない状態で書いたから
ちょっと間違ってるところがあるかも^^;
そこはご愛嬌でw
2008/05/01 03:19 | ゆう [ 編集 ]
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