2008/07/22 (Tue) 『キュア cure』 田口ランディ

キュア cureキュア cure
(2008/01/11)
田口ランディ

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斐川竜介は大学病院の院生として、ガン病棟で毎日患者の体を切り開いている。
外科手術においては、ゴッドハンドと呼ばれるほどの手腕の持ち主だ。
彼には幼い頃から、特殊な能力があり、外科医となった今、無意識にその力を使っている。
人の発する微細な電磁波をメスで感じ取り、ダウジングのように破壊された細胞を探る。
他人の神経回路に同調して、思考や感情を読み取ることによって、患者に病をもたらすストレスに直に触れる。
長い間投与され続けた多量の化学物質や放射線の影響によって混乱しきった意識。
低下した生体反応。
侵された患者の意識に同調して、それを取り込み、整理して感情情報を戻すスクリーニングの作業。
しかし、彼特有の“治療行為”は彼の肉体も痛めつける。

やがて彼自身も、病に同調したかのように、肝臓がんに侵されてしまう。
初めて“患者”になった彼は自分の求める治療が病院にはないことを思い知らされる。
かといって、宗教にもスピリチュアルなヒーラーにも彼は身を委ねることができない。
人の求めるCURE(治療)とか一体どんなものなのか・・・。

その昔、人を癒すのはシャーマンだった。
いま、医療は西洋医学にその身を委ねている。
それを批判するわけではないが、ただそれだけで人は癒せるものではないのではないか。
ガン治療に携わるものたちの傲慢さ、病院の抱える矛盾点。
治らない者は切り捨てられ、患者は管理される家畜と化している。
死ななければ良しとされ、その生の内実は関知されない。

上記のように本作のテーマは治療のありかた、あるいはなぜ人は病むのか、という部分だと思う。
それを踏まえたうえで、あえて違う観点から読んでみる。
斐川は特殊な力を持つが、いわゆるヒーローではない。
仕事に疲れ、鬱屈を抱えている。ヒューマニズムの対極にいるような性格だ。
生まれ持った能力はその性質ゆえ、他人と近しくなることを阻害する。
そのうえ、病んだ者に同調する作業は、彼自身をも痛めつける。
しかし、人は誰しも倒れた人がいれば手を差し延べたくなるものではないのか。
だからこそ彼は最後まで“治療”を行ったのだろうか。
それもまたこの作品の隠されたテーマではないだろうか。

ああ そうだ。忘れてはならない。
その昔、人を癒すのはシャ-マンだったが、同時に、呪うのもシャーマンだったことを。

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